『プリキュアと考える哲学<プリ哲>』 ~エロティシズム編~

プリキュアと考える哲学<プリ哲>』
~エロティシズム編~

 Go!プリンセスプリキュア

 

 

海藤家・みなみの部屋

きらら「いやー相変わらず立派な家だねー」

みなみ「ありがとう。今日はゆっくりしていくといいわ」

きらら「そうさせてもらうよー。最近仕事が忙しくってさぁ、ひっさしぶりの1日オフだよー」

きららは今日、久しぶりの休みを利用しみなみの家に遊びに来ています

みなみ「でも良いことじゃない、段々仕事が増えてきて」

きらら「そこは本当にね。忙しくなった分しっかりこなさなくちゃ」

みなみ「寮に帰るとすぐ眠くなってしまうんじゃないかしら?」

きらら「うん、まぁでも良いデザインが浮かびそうなときなんかは机で考え込んじゃうなー。結局そのまま寝ちゃうけどね....」

みなみ「きららはがんばり屋さんね。気分転換はできているの?確かに大事な時期だけど、体調管理が心配だわ」

きらら「うーん、学校ではるはるをいじるくらいかな?」

みなみ「そ、それはどうなのかしら...」

きらら「こないだもさー…」

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~数日前・食堂~

きらら「だーれだ(低音ボイス)」

はるか「ぅわわぁ!」

きらら「だれだ(超低音)」

はるか「この細い指でぇ、こんなことするのはー...きららちゃん!!」

きらら「こんなこととはなんだー!!」髪ワシャワシャ―

はるか「わあぁごめんごめん!」

きらら「それー!!」コチョコチョー

はるか「き!きら!らちゃ!!あははははは!!!」

きらら「それー!!!まだまだー!!」

はるか「ひーー!!!!」

 

 

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きらら「ってことが」

みなみ「きらら、あなたって人は...」(少し羨ましいわ....)

きらら「そーだなー、他には...」

みなみ(まだあるのね)

 


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~1週間前・きららの部屋~

きらら「ねぇはるはる、ポッキーゲームしよ!」

はるか「えぇ!?ポッキーゲーム!?」

きらら「いいじゃん!はい、あーん」

はるか「え、え、」パク

きらら「ひふよー(いくよー)」

 

ポリポリ

 

はるか「ぅんん...!」

きらら(はるはる、こんな強く目つむっちゃって、顔も真っ赤じゃん....ちょっとからかうくらいのつもりだったのに...)

 

ポリポリ

 

はるか「んん...!」フルフル

きらら(小刻みに震えてる....なんかこっちが変な気分になっちゃうじゃん...)

はるか(きららちゃんの顔が近いのが分かる...なんだかすっごく恥ずかしい...!)

きらら(あと少し、あと少しでついちゃう...!!でも....)


はるか「ん...」カオマッカチラミ

 

きらら(あ、もう無理つけよう)

 

ポリポリポリ

 

はるか(え、きららちゃ、え!!?)

 

きらら(えええええええい!)

 


トワ「きらら、開けますわよ」ガチャ


きらら「おわああああああ!!??????」

ポキッ

はるか「きゃああ!!」

トワ「ど、どうしましたの!?」

きらら「いや!何でもない!!何でもないからトワっち!!」

はるか「きららちゃ~ん....ひどいよぉ」

きらら「わー!!はるはるごめんごめん!!」

トワ「どうしましたのきらら?」

きらら「何でもないって!」

はるか「きららちゃんひどいよぉ...」

きらら「ごめんごめん!!」


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きらら「なんてことがあってさ」

みなみ「私だったら上手くやってたわ」(あんまりはるかを驚かせちゃだめよ)

きらら「みなみん、本音と建前が逆だよ....まぁでも、最近はるはるを驚かせたりするとなんだか変な気持ちになるんだよね」

みなみ「変な気持ち?」

きらら「そう。はるはるの反応が見たくてついからかっちゃうんだよね。あんまりするのも可哀想な気がするんだけど、どうしてもちょっかい出しちゃうんだよねー」

みなみ「きらら、それはあなたにとってのエロティシズムなのかもしれないわ」

きらら「エロ...みなみん何言ってるの!?」

みなみ「エロティシズムよ。フランスの哲学者、ジョルジュ・バタイユが論じた哲学ね」

きらら「哲学?いきなり難しい話をするねぇみなみん....でも、その哲学があたしにどう関係してるの?」

みなみ「エロティシズムの観点からみれば、きららがはるかをどう思っているか考えられるわ。そのためにはまず簡単に概念を説明するわね」

きらら「おぉー、それならちょっと興味あるかも!それじゃあお願いしまーす!」

みなみ「まず、私達の社会のなかで、労働を集約して組織化するためにはルールが必要よね。エロティシズムというのは、そういったルールを破る、いわゆる<侵犯>するときに生じるものと定義されるわ」

きらら「なんだか歯止めのきかなくなりそうな考え方だなー」

みなみ「確かにそうね。でもここでの侵犯とは、禁止そのものを無くすわけじゃなくて、禁止を一時的に解除する意味に近いわ。そして禁止の侵犯を達成すると、今の侵犯をさらに破るために、今度は逆に禁止を維持して侵犯をできないようにするの」

きらら「侵犯のあとには、侵犯できなくするのか。でもそれじゃあ意味なくない?」

みなみ「侵犯のあとの禁止の意味はあるの。禁止を侵犯した後、<禁止の侵犯>を侵犯することを楽しむ考え方よ。破ったルールそのものを破る、と言ったら分かりやすいかしら」

きらら「侵犯侵犯ややこしいなぁー。でもそれだと無限ループじゃん。侵犯、禁止、さらに侵犯、って」

みなみ「バタイユこの侵犯こそがエロティシズムの本質だと言っているの。それは我々が喜びを感じるからだというのが彼の主張ね」

きらら「侵犯が喜びってのがよく分かんないな。そもそも抽象的だし、あたしはぱっと実感できることが思い浮かばないよ」

みなみ「そうね、バタイユの言う我々が、特に男性の視点というのが影響しているかもしれないわね。例えば、侵犯されるものとして女性の<美>があるわ。」

きらら「男の人から見た女の人の美しさってこと?」

みなみ「そうね、女性の魅力に応じて男性の侵犯の対象になるわ。バタイユは、美とはそれが隠しているものを予感させるような価値だと言っているの。美しいものは汚されるべきものだからこそ意味をもつ。我々が求めているのは美そのものではなく、美を侵犯することで味わわれるエロス的喜びだと」


きらら「なんか過激な主張だな....」

みなみ「さっきも話したけれど、やはりバタイユの主張となる部分は、エロティシズムの本質=禁止の侵犯、ね。美を欲する理由は美を予感させる価値を侵犯し、汚すことに価値があると。ここでさっきのきららの話を振り返ってみると、可哀想だからと後ろめたい気持ちもありながらつい手を出してしまうのよね?」

きらら「手を出すって言い方は生徒会長としてどうなの....たしかに、それで間違ってないかな」

みなみ「だとすればきららは、汚れを知らないはるかを程度はあれ侵犯することで喜びを感じていることになるわね」

きらら「みなみん、言い方がどんどん危なくなって...って言いたいけど、本質的には合ってるかもね。たしかに、純粋なはるはるをただ見ているのも良いけど、いたずらして照れたり驚いたりするはるはるを見てる方がドキドキするかな...」

みなみ「だとすると、きららにとってはるかはここでいう美としての存在。そのなかでエロス的喜びとは、侵犯することで得られるのね。バタイユの論では、男性視点となっているから、女性視点のエロス的喜びは明確に提言されていないの。きららの状況は、バタイユの提言と同じようね」

きらら「そうか!バタイユは男だから、必ずしもその論が女の人にも通じるとは限らないのか!」

みなみ「そういうことね、ふふ」

きらら「じゃあさ、みなみん的には喜びってなんなの?やっぱ侵犯すること?」

みなみ「そうね、私はどちらかというと侵犯される方ね」

きらら「侵犯される?はるはるにいたずらされたいってこと?」

みなみ「それもアリね。いえ、侵犯されるというより、巻き込まれる、といった方が良いかしら。はるかと接して、影響し合えること。はるかを侵犯し、そのはるかが私と接していくことは、お互いに影響すると思うの。私自身に美は見いださないけれど、はるかという美を、侵犯「する」といったこちらの動作だけでなくて、結果的に侵犯する、平衡状態になるような関係性に興ふ...喜びを感じるわ」

きらら「つっこみたいとこはたくさんあるけど!!とりあえず、みなみんは動作だけでなくて関係性も同じくらい喜びの対象ってことか。しかも、はるはるは美の対象ながら、たとえ平衡状態として汚れる部分があるとしても、大事なのはその果てに自分とはるはるが同一の存在になることなのか!」

みなみ「さすがきらら、理解が早いわ。やっぱりきららには私と似たものを感じるわ」

きらら「いやーーそんなことないよーー(みなみん....目が笑ってない)」

みなみ(そうね、私ははるかと同質でありたい...概念としても、物理的にも....)

きらら(みなみんからヤバいオーラを感じる....)「あ、あたしは侵犯で十分かなー!」

みなみ「きららにも、いずれ理解できる日がくるわよ。そう遠くないうちに」

きらら「みなみん、ほんとはるはるのことになると目がマジだよね...ねぇ、1つ気になったんだけど」

みなみ「何かしら?今週末ならはるかは私とバレエのレッスンだから空いてないわよ」

きらら「いや違うし!!いやその、聞くの怖いんだけど、みなみんははるはるを侵犯「する」時は何をしてるの....?」

 


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ゆい「はるかちゃん、今週末はバレエのレッスンなの?」

はるか「うん!みなみさんが付きっきりで指導してくださるの!!」

ゆい「へえー!それはすごいね!」

はるか「そうなの!みなみさんの指導は本当に丁寧で、いつも手取り足取り教えてくれるから私も頑張らなくっちゃ!!」

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みなみ「....早く土曜日にならないかしら」

 


おわり

 

 

 

 

 

参考

「読まずに死ねない哲学名著50冊」 平原卓著 フォレスト出版